津波工学研究室について

研究室紹介動画

2020年度オープンキャンパス用に研究室紹介動画を作成いたしました.研究内容や学生の活動内容を紹介しております.ぜひご覧ください!

研究内容

災害は、自然現象(外力)と人間社会の営みとの干渉によって発生します。災害の様相も、人間活動の様式の変化に伴い、進化していきます。これからの災害対策は、過去の災害事例に基づいたものだけでなく、社会の発展と変貌する災害過程を予測し、地域の発展と脆弱性に応じたきめ細かなものであるべきです。

津波工学研究室では、工学的な立場から津波を研究する世界で唯一の研究機関です。災害対策・制御の理念を基盤として、 国内外の現地調査研究、高精度津波数値予測システムの開発、地域の津波災害対策支援を主とした研究を行っています。

TIME Projectのシンボルマーク

特に、津波の解析技術は世界の津波被害の予想される国への国際的な技術移転の対象となっており、TIME(Tsunami Inundation Modeling Exchange)プロジェクトはその中核として位置づけられています。本研究室の津波解析コードは、これまで世界7カ国以上に技術移転され、津波災害の軽減に役立っています。
右の絵はTIME Projectのシンボルマークです。

■活動目標

津波工学研究室は、以下を活動目標として、研究の実施、学生の研究指導、社会貢献を行っています。

  • 津波研究のフロントランナーとしての学術面での先導的役割を担う
  • 国内外の津波対策推進に貢献する
  • 宮城県沖地震・津波災害の被害軽減に資する研究活動・社会活動を積極的に実施する
  • 地域の防災力向上を目指した教育を地域で展開する

■最近の研究テーマ

最近の研究テーマを以下に列挙します。

  • 2011年東北地方太平洋沖地震津波の被害実態の解明
  • 文理融合アプローチによる複合津波災害過程および被害拡大メカニズムの解明
  • 次世代型津波予警報システムの基盤構築
  • 高精度津波数値解析技術による海岸侵食・回復過程の解明
  • 非地震性津波数値解析技術の開発
  • 津波避難行動の記録化手法の開発と特性解明
  • 災害情報・防災情報・災害伝承が行動変容に及ぼす影響の解明
  • 効果的・持続的な防災教育の開発・実践に関する研究
  • 東日本大震災における宮城県での犠牲者情報の分析

■津波発生メカニズムの解明

大津波をコンピュータシミュレーション

地震津波の発生メカニズムは、断層運動により発生した海底の地盤変動の鉛直成分(隆起・沈下)がその上方の海水に影響を及ぼし、いわば生き写しとなって海面に現れ、それが水の波として伝わるものです。海底地盤の変動の広がりは数十キロメートルから数百キロメートルにおよぶ場合があります。したがって、発生直後の津波の広がりも同様の広がりをもつと言えます。

海洋の水深は深いところでも10,000メートル(10キロメートル)程度ですから、津波の広がりのスケールは水深のスケールよりはるかに長いと言えます。この点において、津波は他の水の波とはその性質が大きく異なるのです。

右の図は、2004年12月にスマトラ島沖で発生した巨大地震(M9)による大津波をコンピュータシミュレーションにより再現したものです(地震発生から2時間後)。

三重県太平洋岸の市街地に押し寄せる津波の高さ予測図

私たちは、起こり得る津波を予測し、被害の軽減に役立てるための研究を行っています。そのために、コンピュータシミュレーション技術を活用して、津波の市街地への氾濫を詳細に予測できるシミュレーションモデルの開発を行っています。

右の図は、三重県太平洋岸の市街地に押し寄せる津波の高さを予測したものです。市街地に侵入してくる津波を詳細に調べることにより、起こり得る被害程度の予測や、避難計画やハザードマップなど人的被害を軽減するための方策を検討することが可能になります。

下の左側の写真は2004年6月23日(津波発生前)に撮影されたインドネシア・スマトラ島バンダ・アチェの市街地です。多くの家が建ち並び、美しい海岸であることが分かります。

右側の写真は、津波が襲った後(2004年12月28日)に同じ場所を 撮影したものです。10メートルもの高さの津波がこの街を襲ったことにより、すべての建物が流され、橋や樹木も破壊されて しまったことが分かります。また、海岸線の形も大きく変わってしまいました。地震による大規模な地盤沈下と津波による海岸侵食 がこれほどの大きな地形の変化をもたらしました。

津波発生前に撮影されたインドネシア・スマトラ島バンダ・アチェの市街地
インドネシア・スマトラ島北部バンダアチェの市街地(左:津波前,右:津波後,Digital Globe提供)

卒業論文タイトル(過去三年間)

( 2020年度 )
・ミリング行動に着目した避難行動家庭の分析:名取市閖上地区の事例(川合将矢)
・スンダ海峡における地震性・非地震性津波の特性と非難対応(千葉愛理)
・海面上昇が津波経済リスクに与える影響評価ー産業連関表を用いた推定法ー(藤皓介)
( 2019年度 )
・東日本大震災における犠牲者情報を用いた人的被害に関する研究〜遺体発見場所に基づく宮城県自治体を対象とした死因の傾向分析〜(鎌田紘一)
・高知県における津波碑の建立の意義および位置に関する実態分析(田畑佳祐)
・東日本大震災の教訓浸透度評価の試み ー東北大学MOOC受講者を対象にしてー(渡邉勇)
・土砂移動モデルを用いた遠地・近地津波による地形変化−米国ワシントン州ディスカバリー湾の事例(渡邊凌生)
 
( 2018年度 )
・仙台市震災復興メモリアル施設の整備状況と来館者による利用評価(門倉七海)
・東日本大震災発生時でのハザードマップの整備状況とリスク認知(芹川智紀)
・タイ・プラトーン島を対象とした2004年インド洋大津波による土砂移動の実態とその解析(柾谷亮太)
 
 

修士論文タイトル(過去三年間)

( 2021年度 )
・Analysis of Evacuation Process Focusing on Proactive Behavior and Information Surrounding Residents: Highlighting "Zero Casualty" Goals(Jehan Fe Panti)
・A database of tsunami hazards: an assessment of major ports in Taiwan(An Chi Cheng)
( 2020年度 )
・水害から50年経過した被災地での記憶や備えに及ぼす影響要因(門倉七海)
・東日本大震災における犠牲者情報の分析- 宮城県石巻市を対象とした事例 -(芹川智紀)
・巨大津波特性と津波堆積物の土砂供給源に関する数値的検討(柾谷亮太)
( 2019年度 )
・東日本大震災発生時の状況変化を考慮した津波避難意思決定及び行動−気仙沼市階上地区での事例研究−(新家杏奈)
・遺伝的アルゴリズムを用いた沖合津波観測点の最適配置探索手法(倉本和俊)
 
( 2018年度 )
・港湾ネットワークを考慮したグローバル津波リスクの検討(大竹拓郎)
・東日本大震災で浸水したエリアにおける居住者・来訪者を対象とした津波避難対策の実態把握に関する研究(馬場亮太)
 
 

博士論文タイトル(過去三年間)

( 2019年度 )
・津波襲来時における大規模避難プロセスのモデリングとシミュレーション(牧野嶋文泰)
 
( 2017年度 )
・巨大津波の波源推定への円錐型断層モデルと土砂移動モデルの適用性評価(久松明史)
 
( 2015年度 )
・狭域および広域における建築物の直接被害を対象とした津波リスクの定量評価手法の提案(福谷陽)